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洞穴
洞穴はどこまでも伸びていく
届く光は微かで、そんな僅かの光も逃すまいと眼を凝らしていた
足元は見えている
続く壁の凹凸の機微も読み取れる
踏み出した足がばしょりと水溜りを蹴る。音は洞穴中を楽しそうに駆け回り、やがて空気に馴染んで消えていった
なぜ、なぜだろうか
なぜ私はここを歩くのだろうか
暗く、寒く、孤独な道を
望んで歩いたわけではない
しかし、これ以外に道は無かった。だから、ただただ歩いたのだ
どこに繋がるのかも、いつ明けるのかも知らないこの洞穴を、ずうっと
果たして意味はあるだろうか
足跡すら残らないこの洞窟での歩みが
照らされる事のない己の姿が
届く事のないか細い声が
意味を紡ぐ時を待っている
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