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桜の死
窓の端を桜が掴む
叩きつけるような雨の後の、嘘のような晴れの日に、私はそれを見つけた
打ち落とされた桜の死骸達が、道路を斑に染めている
死屍累々の中、その窓にへばりついた一枚は、まだ落ちまいとしていた
「まだ生きたい。まだ咲きたい。まだ誇りたい。この淡、薄桃、薫風の最中燃えるように」
きっとそんな所だろう。この一枚の死に損ないが言いたいのは
しかし、思う
桜というものが今なお「美しい」と言われ続けるのは
春のうちに死ぬからではないかと
邪な人間に穢される前に、美しいまま桜は死ぬ。
そして次の春、桜はまた、美しく咲き誇るのだろう。
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