top of page
名称未設定のデザイン (3).png

Yoru no ma

銀の尾ヒレ

 

 

銀の尾ヒレを見た

川にはそれしか残っていない

 

 

掬おうと手を川に浸すが、尾ヒレは掌をするりと避け、また川面をせせらいだ。

 

 

彼は夜に縫い留められていた

 

 

私の瞳もそうだった

 

 

尾ヒレをじっと眺めている

 

 

「僕なんかじゃなくて、上を見なさい。僕を作った方がいる。もっと美しい方がいる。こんなついでに出来た奴より、上の方を見上げなさい」

 

 

尾ヒレはひとつ、ぴしょりと水をはたいた

 

 

「いいや、私には、これがいい。貴方から上の方を想うのですよ。容姿の子細は知り得ませんが、きっと厳かに美しい方であろうという事は、尾ヒレよ、川面に映る貴方の儚い輝きが教えてくれるのですよ。」

 

 

尾ヒレは返さない。であれば、私も

 

 

二人は同じく、白銀を讃えていた

bottom of page