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Yoru no ma
銀の尾ヒレ
銀の尾ヒレを見た
川にはそれしか残っていない
掬おうと手を川に浸すが、尾ヒレは掌をするりと避け、また川面をせせらいだ。
彼は夜に縫い留められていた
私の瞳もそうだった
尾ヒレをじっと眺めている
「僕なんかじゃなくて、上を見なさい。僕を作った方がいる。もっと美しい方がいる。こんなついでに出来た奴より、上の方を見上げなさい」
尾ヒレはひとつ、ぴしょりと水をはたいた
「いいや、私には、これがいい。貴方から上の方を想うのですよ。容姿の子細は知り得ませんが、きっと厳かに美しい方であろうという事は、尾ヒレよ、川面に映る貴方の儚い輝きが教えてくれるのですよ。」
尾ヒレは返さない。であれば、私も
二人は同じく、白銀を讃えていた
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